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真実は闇の中に

タナッセ憎悪でレハト殺害後の話。
割と暗い話でタナッセもヴァイルも報われない。


 最後の日、ヴァイルは雨の日と同じように屋上でその姿を待っていた。彼と共にいると誓ってくれた愛しい姿を瞼の裏に想像しながら、いつ来るかいつ来るかと楽しみにしていた。もしもレハトが来てくれたら、その時、彼に言いたい言葉を告げたい。
 ――本当にずっと、一生自分の側にいて欲しい。だから結婚してほしい。
 つまり、ヴァイルはプロポーズをしようと企んでいたのだ。ヴァイルは屋上の縁から湖を眺めながら、どうやってプロポーズしようか、その台詞を延々と考えていた。

「結婚して下さい……は何かなぁ」

 きっと、レハトはどんな言葉でも自分と共に居てくれるだろうが、やはりここは格好良く決めたい。そんな少しの緊張と淡い期待を抱きながらヴァイルは、レハトが来るのを待ったが、その日、レハトが彼の元を訪れることはなかった。ヴァイルは、裏切られたような気分になったが、恐らくは用事が重なったのだろうと思い、自分を納得させて屋上を後にした。
 しかし、城内に入ると妙に慌ただしい。これも明日の儀の準備だろうな、と思いながら自室へ戻って寝台に寝転がる。

「明日で子どもも終わり、か……」

 どちらかが王となり、どちらかが王の補佐か。レハトが残ってくれるならどちらでもいいや。手の平をぼんやりと見える太陽にかざし、その隙間から見える陽光を浴びる。
 そんなことを思っていると侍従が血相を変えて入ってきた。この顔は見覚えがある、確かレハトの侍従だ。

「ヴァイル様、申し訳ございません。レハト様はいらっしゃいませんか」
「何、どうしたの? レハトならここにいないよ」

 そう告げると侍従はしかめっ面になり「そうですか」と告げた。それから一礼して部屋を出て行った後には、何故か重苦しい雰囲気が残された。



 翌朝、準備を整えて玉座の間に向かう。しかし、レハトの姿は見えないまま。今日は会えるだろうと一縷の望みを持って待っていると、リリアノが到着してそのまま継承の儀が始まる。途端にヴァイルは立ち上がり、リリアノに向かって告げた。

「ねぇ、何でレハト来てないのに始めるの?」
「レハトは体調を崩していてな。あまりに酷いようだからレハトは自室におるよ。結果も告げたので、問題は無かろう」
「え、それじゃ……」

 それじゃあ困る。レハトがどっちの性別を選んだのか分からないと、自分も性別を選ぶことが出来ない。それでも、選ばないということは出来ないから、散々迷った挙句、ヴァイルは男を選択した。レハトは前に女を選ぶと言っていたから、きっと女を選ぶと思ったからだ。
 それでも不安を解消することは出来なかったヴァイルは、儀式が終わって部屋へと戻る前に、レハトの侍従……ローニカに「女を選んでほしい」とレハトに対して言付を頼んだ。ローニカはヴァイルのその言葉に一瞬口を噤んだ後「分かりました」と言って、ヴァイルの元から去った。
 籠りの間、ヴァイルはずっとレハトを想っていた。それこそ毎日レハトの様子を聞いたり、レハトに会いたいと漏らすくらいに。その度に周りの侍従たちは「ちゃんと女を選びましたよ」「レハト様もヴァイル様に会いたいと言っておりました」と言うことで何とか凌いでいた。ヴァイルはそんな言葉にどこか違和感を感じたが、気のせいだろうと思い、何度もレハトのことを考えた。籠りが終わり、少し落ち着いたらレハトにプロポーズしようと。その時のことを考えては、ヴァイルは一人照れたように布団に顔を隠した。
 しかし、籠りを超えてもレハトの姿はなかった。さすがに不審に思ったヴァイルはリリアノに聞きに行った。

「伯母さん、どういうこと? レハトの姿が全然見えないんだけど」

 リリアノはヴァイルの問いが分かっていたのか、落ち着いた様子で告げた。

「……体力の低下のせいか、最後の山場を越えられなくてな。本当はもっと早く言いたかったが……」
「そんな……」

 レハトが死んでいた。それも自分が知らない間に。体力が戻らなくて死んだのは仕方ないとしても、ヴァイルはどこか漠然とした気持ちになっていた。約束したのに、ずっと一緒にいてくれるって――
 もっと早く言ってくれたなら良かった。そうすればレハトと同じ所へ行けたかもしれない。でも、リリアノの判断は賢明だとも思う。王を途絶えさせてはならないのだ。候補者二人を一度に失うのは痛すぎる。だから、これで良かったのだとヴァイルは思うことにした。

「ごめん、伯母さん。忙しい時にこんなこと聞いて」
「いや、構わぬよ。いずれは知らさねばならなかったことだからな」

 そう言ってリリアノは微笑んだ。ヴァイルも気丈に振る舞うかのように、口角を上げた。







 ヴァイルが全ての真実を知ったのは、籠りを終えてから二か月後のことだった。
 それに気が付いた切っ掛けは本当に些細なことだった。その原因は自らヴァイルの元へ訪れた。

「どうして誰とも婚約をしない」

 タナッセがそう言うと、ヴァイルは面倒臭そうにタナッセを睨む。

「別にそんなことタナッセにはどうでもいいじゃん。俺がしようがしまいが関係ないでしょ」
「お前が婚約しないとランテの血が絶えるだろうが」
「別に……ランテの血とか、どうでもいいし。それに血を絶えさせたくないならタナッセが結婚したら?」

 投げやりな態度でヴァイルはそう言う。どう考えてもタナッセに求婚する貴族はいないだろうと見越しての発言だった。
 レハトが亡くなってからというもの、ヴァイルは誰に対しても冷酷な態度を取っていた。特に貴族からの求婚は、それこそ使用人の噂でも語られるくらいに酷い断りをしている。しつこく求婚すれば最悪領地取り上げ、良くて謁見が難しくなる。そのためヴァイルに求婚しようという貴族はほとんどいなくなっていた。それどころが如何にヴァイルに取り入るか、気にいられるか。そのために贈り物をする貴族が増えていた。

「私のことはどうでもいい。お前のことを思って……」
「良いよ。タナッセは自分のことだけ思ってたら良いじゃん」
「あいつのことをいつまでも引き摺るのはいい加減辞めろ。あいつよりもお前の幸せを……」
「……幸せ? ないよ、そんなの」

 そう言ってヴァイルはにこりと笑う。タナッセはその笑みを見て、背筋が凍りつくように冷や汗が伝うのを感じた。ヴァイルはお茶を啜ると、今までの不機嫌が嘘のようににこやかに話し始めた。

「俺さ、結局は一人になる運命だったんだ。一緒にいてくれるって約束してくれたのに、レハトは体調崩して死んじゃったしさぁ。……仕方ないって言われたら、そうかもしんないけど、でも、あの時の俺はまだ子どもだったから受け入れられない。今もだけどね」
「なら尚更……」
「もう良いんだよ。……もう、裏切られたくないから」
「ヴァイル……」

 語調こそ落ち込んでいるのに、それを語るヴァイルの顔を見てタナッセは思った。――ヴァイルは可笑しい。もうすでにいなくなった人間に対して執着心が余りにも強すぎる。それは彼の父のことでも分かっていたが、まさかあんなぽっと出の奴にすら同じだけの想いを抱いているなんて――
 途端、タナッセはレハトを憎く思った。死してなお、ヴァイルの心を手に取るレハトがどうしようもなく憎い。最終日に告白し、尚且つヴァイルとの約束を反故しようとしたレハトが。

「アイツは死んで当然だ。殺されて当然だ!」

 突然、そう叫んだタナッセにヴァイルは目を見開く。そして、不快そうな顔をしながら「そう言うの止めて。聞きたくない」と言うが、タナッセの口は止まらない。

「アイツは元からお前を弄んでいた! だから――」
「……ちょっと、それどういうこと? レハトが俺を弄んでいたって?」

 ヴァイルはタナッセからその詳細を教えてもらうためにタナッセの正面に座る。久方ぶりに良く見るヴァイルの顔は気のせいか、以前よりも痩せて見えた。それほどまでにレハトを愛していたのか、と哀れにも思う。所詮ヴァイルも騙されていたのだ。
 それからタナッセは事細かく話した。最後の日ヴァイルに会いに来なかったのはタナッセに告白するためで、タナッセと結婚出来るならレハトはヴァイルとの約束を破り城を出ると言ったこと。それに激昂したタナッセがモルに命じてレハトを湖に沈めたこと。全て語り終えるとタナッセはどこか清々しい気分だった。自分はヴァイルを守ることが出来たのだと、心の何処かで自負していたからかもしれない。
 しかし――

「……嘘だ。レハトが、そんなこと言うわけない。レハトが俺と、一緒にいるって、約束を破るなんて、ありえない」
「嘘じゃな――」
「嘘だッ!」

 ヴァイルがそう叫ぶと腰につけていた長剣を抜き、それをタナッセの首元へ当てる。主人の危機にモルが動くが、ヴァイルの鋭い眼光に怯んだのか、それ以上近寄ることはない。

「嘘だッ、嘘だ嘘だ嘘だッ! レハトは俺と、俺とずっと一緒にいてくれるって約束した! 最後の日も俺に会いに来てくれるはずだったんだ、なのにタナッセが呼び出して殺したんだ!」
「違う! これは本当に――」
「レハトがタナッセのことを好きなんて言うはずない! タナッセがレハトを殺したんだ! つまんない嫉妬で……ッ! 最低最低!」

 子供の癇癪のようにヴァイルを声を張り上げる。そうやってタナッセを責めたてている内にヴァイルの頬には涙が伝う。タナッセは何か言おうと口を開けば、飛んでくるのは否定の言葉ばかり。
 ――どうしてヴァイルは信じてくれないのか。
 全て告げているのは真実だと言うのに、ヴァイルはそれを認めない。それがどうしてか。……ヴァイルが自分を敵視しているから。ヴァイルとタナッセの仲が悪いのは周知のことで、またレハトとタナッセが互いを憎み合っているのも知られていた。それとも、重ねに重ねたすれ違いの果てなのかもしれない。
 だから、ヴァイルは信じようとしない。タナッセが何を言っても、ヴァイルの目には愛しい人を殺した仇にしか見えない。
 それならば、とタナッセはヴァイルを見て短く告げる。

「殺せ」

 その言葉にヴァイルはタナッセを見つめる。タナッセはその意志を示すように、剣先に自分の喉を押し付ける。埋め込まれた先から血が流れてくるのを見て、ヴァイルは剣を下ろした。そして、振り向いて歪に笑う。

「殺さないであげる。だから……もう二度と姿を見せないで。今度姿を表したら、殺すから」

 そう告げるとヴァイルは寝台に倒れ、嗚咽を零し始める。その姿を見てタナッセはヴァイルに声を掛けようと思ったが、唇を噛みしめて部屋を去った。

「レハト……っ」

 心底惜しむように紡がれる、忌々しきその名を耳に残しながら。


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サイト名の通り、色んなキャラに浮気しまくってます。基本SS(と呼んでいいか分からない文)書いて満足してます。矛盾・誤字などがありましたら報告して下さると嬉しいです。

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