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Shall we dance?

[前提]ヴァイル友情verA
[設定]男/王
[補足]好愛高めなので女ヴァイルになってます。

『かもサーチ』様に登録しました。
よろしくお願いします。

・タイトル詐欺です。ロクに踊ってません。


 僕が王を継いでから一ヶ月後の今夜、久々の舞踏会が開かれる。社交場で初めて僕が王として振舞うこの日をずっと待ち望んでいた。リリアノからは「手強い者が手を引いて待っているぞ」と笑い混じりに言われたが、僕はそんな心配を一つも抱いてはいない。

「――見つけた」

 人ごみの合間、長く伸びた彼女の姿はどこか落ち着きがなく、ちらちらと辺りを見回して壁の華となっていた。しかも、あれ程嫌っていたずるずるしたドレスを着ている。その様子が珍しいのか、それとも彼女が女を選んだことが意外なのか、数人の貴族たちが遠巻きに彼女を見ていた。
 何人かの貴族の息子たちが彼女に話しかけているが、彼女はその度に暗い面持ちで何やら断っている。傍から見ていても元気がないように思えた。本当は乗り気じゃなかったのだろうか、と招待状を出した僕は考えていると、華やかな衣装を身に纏った娘が僕の腕を掴み「一曲踊って下さる?」と聞いてくる。
 どうしようか、と迷っていると不意にヴァイルを視線が合う。彼女は咄嗟に視線を伏せて、そのまま別の場所へと歩いていってしまった。……嫉妬しているのか? そう考えると何だか嬉しくて、今すぐにでも彼女の元へ駆け寄りたい衝動に駆られた。

「すまない。他を当たってくれないかな」

 やんわりと娘の手を離して断りを入れながら、僕は彼女が去った方向へと歩き出す。どこにいるのだろう、と辺りを見回すと、すぐにその姿は見つかった。

「ヴァイル」

 彼女の名前を呼ぶと、彼女はびくりと肩を震わせた後、僕の方を向いた。どこか緊張した面持ちで微笑む。やっぱりヴァイルは女性でも可愛い。こんなに可愛かったら他の男に取られてしまうかもしれない。……それは嫌だな。

「……ね、付いて来て」

 彼女の手を掴んで露台へ出る。夜風が木々を揺らして何だか不気味だが、ざわざわと会話している貴族たちの声にそんな気持ちも紛れていく。

「レハト、あの、俺……」

 ヴァイルが何か言おうとした瞬間、彼女は「くちゅん」と随分可愛い咳をした。それが恥ずかしいと思ったのだろうか、彼女は顔をますます真っ赤にしてしまった。僕はくすくすと笑いながら、着ていた上着を彼女に掛ける。こんなことで風邪を引いてしまっては彼女に申し訳ない。
 ヴァイルは何か言いたげに暫く視線を彷徨わせると、おずおずと言った様子で口を開いた。

「あの……レハトってやっぱり求婚、いっぱいされてるよね」
「求婚? ああ、まぁそうだね」
「やっぱり……」

 求婚は元より、色んな貴族たちの思惑が降りかかってきているけれど。ヴァイルの問いに頷くと、彼女は少し悲しげな声色で言う。その様子がまるで嫉妬しているようで嬉しく思う。
 ……僕は知っている。ヴァイルが僕に好意を抱いていることや、何かを期待していることを。子どもの頃からそれは薄っすらと理解はしていた。けれど、僕は自分の気持ちにはとことん無頓着だったから、自らの想いを自覚していなかった。多分、気のせいだろうと思ったんだ。でも、気が付いたら大人になっていて、僕は男で、彼女は女を選んでいた。その時にようやく分かった。彼女は僕を愛している、だから、ずっとなりたかった男ではなく女を選んだのだと。
 そうと知ればさすがに彼女の決意を無下にするわけにはいかなかった。長年の夢を無下にさせて、自分が望まない性を選んだのだ。せめて、彼女が後悔しないように、僕は彼女を愛さなければならない。

「……お姫様、もし良かったら僕と一曲踊って頂けますか?」

 気取るようにそう告げると、ヴァイルは頬を赤らめ、視線を逸らしながらも頷いた。僕は彼女の手を取り、スローテンポのゆったりとした曲調で彼女と踊る。子どもの時は男性の方で踊っていたからなのか、彼女のステップはどこかぎこちない。何度か彼女の足がつまずきかけたり、僕の足を踏みそうになるたびに、彼女の表情はどんどん暗くなっていく。
 足を止めて「どうしたの?」と聞くと、ヴァイルは首を横に振って「やめる」と言うなり、露台から出ていこうとする。彼女を引き留めようと、彼女の細い腕を掴むと微かに震えているのが分かった。

「ヴァイル、無理をさせて悪かったよ」
「……違う、違うんだ。俺、その……」

 徐々に涙声になりつつある彼女を後ろから抱きしめると、はっと息を呑む音が聞こえた。彼女は僕の腕を抱くと、しくしくと泣き始めてしまった。……傍から見ると僕が彼女を泣かしたように見えてしまう気がする。

「レハトの側に居たいから、女になったのに……こんなんじゃ……」

 そんな言葉が聞こえて、何といじらしいと思ってしまう。きっと普段の彼女からは聞ける言葉ではない。恐らくは酒の力も混じっているだろう。お酒を飲んだ人間は真実しか吐かないという言葉があるくらいだから。

「ヴァイル。君は、君が想っている以上に魅力的で可愛いよ」

 そう耳元で囁くと、彼女はぎゅっと腕を抱く力を強くする。そして、数秒の沈黙の後、ぼそぼそと何かを言った。何を言っているのか分からず、首を傾げているとヴァイルが僕に向き合うと、真っ赤な顔を上げて言った。

「そ、それじゃ……俺を、レハトのお嫁さんにしてくれる?」

 ……心の中でばきゅーんという音がした。
 動揺を隠すために、努めて冷静に頷き「勿論」と告げるとヴァイルはこれ以上真っ赤になりようがないくらいに顔を赤くして、そして、ふらりと体勢を崩す。咄嗟に彼女の体を抱えると、彼女はぎゅっと僕の体を抱きしめてくる。……可愛い。さっきから胸がドキドキしっぱなしだ。
 そう思いながら何とか彼女を横抱きにして舞踏会を後にした。何やら貴族たちがうるさかったが、まあいつものことだろう。それ以上に僕の心は浮かれていたのだから、自然と歩く速さも早くなってくる。
 さて、これからどうしようか。とりあえずヴァイルとの婚約は成立したし、当初の目標も達成した。後は彼女と結婚の打ち合わせを重ねていって――
 そんな楽しい先の未来のことを考えながら、彼女の寝顔を観察する。女性らしく丸みを帯びた輪郭に、ぷっくらとした唇に、爛々とした双眸は薄い涙の膜で濡れている。胸元にはなだらかな双丘があり、確かに彼女は女を選んだのだと意識せざるを得ない。
 彼女を客室に運び、そっと寝台に寝かせる。近くから椅子を持ってきて、彼女の髪を指で梳いていると、不意に彼女の手が伸びてくる。意識がぼんやりとしているのか、薄っすらと目を開けて僕を見ている。

「レハト……」

 そう言ってふにゃりと笑う。それを見て僕は思わず固まる。こ、これは……襲うべき、なのか……? いや、でもまだ結婚してないのに手を出すのはダメだろう。そういうことはちゃんと結婚してから行うべきだ! でも、据え膳食わぬは男の恥とも言うし……。
 悶々とそういうことを考えている内に、ヴァイルはどうやら眠ってしまったらしく、すーすーと寝息を立てている。無防備な彼女の顔を眺めているだけで何だか満足してしまい、結局手を出すことは出来なかった。いや、出す気はなかったよ何たって僕紳士だから! 
 でも、せめて添い寝ぐらいなら……と思い、彼女の隣に入る。そっと毛布を被せてやると暑いのか彼女はそれを蹴っ飛ばしてしまった。あーあ、せっかくのドレスが皺くちゃになっている。まぁ酔っ払っているから仕方ないか。苦笑しながら寝やすいように彼女の胸元を少し開けてやり、彼女の頭の下に腕を差し込む。
 僕達が眠っている間にも夜は少しずつ明けていく。陽光が差し込む部屋の中、きっと彼女と共に目が覚めたら、それほど幸せなことはないだろう。朝起きたら、彼女が真っ赤な顔をしてくれることを予感して、僕は目を閉じた。


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サイト名の通り、色んなキャラに浮気しまくってます。基本SS(と呼んでいいか分からない文)書いて満足してます。矛盾・誤字などがありましたら報告して下さると嬉しいです。

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